新刊「教えない子育て」の極意
2021年2月に新刊「教えない子育て」が発売されました。
「教えない子育て?どういうこと?」
「子どもは何もわからないのだから教えてあげないと」
「何も教えないで好きなようにさせたら、子どもは怠け者になってしまうのでは?」
そんなふうに思われた方は多いと思います。
けれど、本当にそうでしょうか?
このように思ってしまう理由は、
大人が上、子どもが下
という考えから来ているように思います。
しかし、私はそうではないと思っています。
・大人でも、できないことはたくさんある
・大人でも、経験していないことはできない
・大人は、先に生まれた分、経験値が少し高いだけ
そんなふうに捉えることができたなら、
子どもと同じ立場に立って、同じ目線で育ち合う
ことができると思います。
そしてそれこそが、子どもの能力を自由に伸ばすための、ただ一つの方法だと私は信じています。
今回の記事からは、そんな「教えない子育て」の極意について、数回に分けてお伝えしていこうと思います。
●「教えない」のは不親切?なぜ「教えない」方がいいの?●
「教えない子育て」といっても、全く何も教えない、ということではありません。
子どもは何も知らない真っ白な状態で生まれてきます。
もし親が何も教えなければ、生きていくことはできません。
「教えること」と「教えないこと」を親がしっかりと判断して子育てをする
ということがとても大切なのです。
では、どのようなことは教えてあげて、どのようなことは教えない方がいいのでしょうか?
その答えは、30年後の我が子に、どんな大人になって欲しいかを考えたときに見えてきます。
自分の好きなことで力を発揮して、のびのびと人生を歩んでいてほしい
そんなふうに願ったとき、一番必要となる力は何でしょうか。
学力?仕事力?
もちろん、学力はないよりはあったほうがいいです。
好きな仕事に就いて、その仕事でお金を得ることができたら幸せです。
学力や仕事力を身につけるためにも必要な、もっと根本的な力。
自分の好きなことで力を発揮するために一番必要なのは、「考える力」だと私は思います。
「考える力」があれば、学力や学歴、仕事は結果的にあとからついてきます。
では、どうやったら「考える力」を身につけられるのでしょうか?
なんだか堂々巡りのようですが(笑)、敢えて「教えない」ことで、「考える力」を身につけることができるのです。
私たちは、「何でも丁寧に教えてあげることが教育」と思いがちです。
優しくていねいに辛抱強く子どもに教えるお母さんは、よいお母さんに見えます。
しかし、「何でも教える子育て」の一番のデメリットは、子どもが受け身になってしまうことにあります。
お母さんの言うことを素直に聞いて、その通りにすれば間違いがない
子どもがそう思ってしまったら、自分では考えなくなってしまいます。
そうすると当然、「考える力」は身につきません。
●知識は教えるけれど、思考は教えない●
「教えること」と「教えないこと」の切り分けのポイントは、それが「知識」なのか、「思考」なのか、という点です。
考えても分からないこと(知識)は教えてあげましょう。
例えば、子どもが犬を指差して、
「あれはなあに?」と聞いてきたとき、
いくら「自分で考えなさい!」と言ってもわかりませんよね。
そんな場合には、
「あれは犬よ。ワンワンよ。」と教えてあげましょう。
そうやってお子さんは言葉を覚えていきます。
反対に、考える力に結びつくもの(思考)については、教えずに考えさせてあげましょう。
たとえば夕方お散歩をしているときにお子さんが、
「どうして夕日は赤いの?」
と聞いてきたとします。
そんなときは、すぐに答えるのではなく、
「どうしてだと思う?」
と、お子さんに考えさせてあげます。
「お空が燃えてるんじゃない!?」などと言ったとしても、
「あなたはそう思うのね。素晴らしい考え方ね」
と思いっきり褒めてあげましょう。
そうすれば、子どもは色々なことについて深く考えるようになります。
つまり、
・知識は教える
・思考は教えない
というふうに切り分けると、わかりやすいと思います。
子どもは毎日のように「これ何?」「どうして?」と聞いてきます。
すぐに答える前に、子どもが聞いてきたことが「知識」なのか「思考」なのかを考えて、「教える」のか「教えない」のかを決めましょう。
次は、「思考」について、「教えない」ことでどのように「考える力」が身につくのか、具体的にみていきます。
●具体例その1〜失敗するとわかっていても見守る〜●
次男がまだよちよち歩きの2歳の時、小高い丘にピクニックに行きました。
歩くのが楽しくて仕方のない次男は、走り回って遊ぶことを楽しんでいました。
長い下り坂を勢いよく走り出したとき、私は思わず「止まれ!」と言いそうになりましたが、すんでのところで思いとどまりました。
結果、次男は途中で転び、一回転半しました(笑)
そうなることで次男は、
・転ぶと痛いんだ
・下り坂で転ぶと余計に痛いんだ
ということを、身をもって経験したはずです。
私が先回りして失敗させなかったら、「転んだらどうなるのか」を考えることはなかったでしょう。
●具体例その2〜アドバイスをしないで見守る〜●
たとえば公園で砂遊びをしているとき。
子どもは大きな山を作って、そこにトンネルを掘りたいと考えたとします。
乾いた砂を積み上げても、サラサラと崩れるばかり。
そこにトンネルを掘ろうとすると、あっという間に潰れてしまいます。
そんなとき、
「砂にお水をかけて固めれば、しっかりしたお山ができるよ」
とアドバイスしたくなるかもしれません。
素直なお子さんなら、その通りにしてみて、トンネルを掘ることに成功するでしょう。
でもそれは、自分で考えたことではありません。
お母さんのアドバイスを受けて「教わった」ことなのです。
「考える力」をつけるために必要なサポートは、「もう一回、挑戦してみよう!」と、失敗にメゲない励ましの言葉をかけてあげることです。
すると、最初はできなくて泣いていたとしても、
どうやったらできるだろう?
↓
あの子はできている。なんでだろう?
↓
あ、水をかけている!ボクもやってみよう!
↓
できた!
というように、自分で観察し、発見し、行動して得られた結果で、何ものにも代えがたい達成感と満足感を味わうことができます。
いかがでしょうか。
「失敗するのがわかっているのに見守る」ことは、「口を出す」より何倍も難しいです。
アドバイスをした方が親もラクで子どもも泣かずに済むため、思わず手や口が出そうになるでしょう。
けれど、失敗するとどうなるかを「教える」ことに意味はありません。
「教えない」で、自分で経験して体で覚える以外の方法はないのです。
失敗しないよう教えるのは、
1.命の危険がある場合
2.他人に重大な迷惑をかける場合
のみで大丈夫です。
そして、この2つは、それほど頻繁にあるわけではありません。
考える力をつけるために、教えず見守り、たくさんの体験や感情を味わわせてあげましょう。